みちばたみちすがら

とおりみち通信 2007年5月8日号 道端の絶滅危惧種(ぜつめつきぐしゅ) 
 
イヌノフグリの花 4月28日 福岡市

 
数年前から、イヌノフグリという小さな草を見ています。
イヌノフグリは環境省から絶滅危惧種(絶滅するおそれのある生き物)に指定されている植物ですが(注1)
山の中や森の中というより、まちの中で見かけることが多いです。
福岡では毎年2月・3月ごろから、直径2〜3ミリの小さな紅色の花を咲かせます。
この春、自分がこれまで見てきたり、ここにあるんじゃないかというカンがあったりする場所を回ってみました。
 
イヌノフグリは、いくらか自然に草が生えているような街角の、
日が当たる植え込みやコンクリート・アスファルトの隙間、
そして石垣のような場所に生えやすいようです。土の古い公園でも見られます。
 
こんなところに生えていました(今年の写真)↓
 

道ばたのブロック塀

住宅地の石垣

公園の石積み

駐車場の地面の上

 
よく似た植物に、小さな青紫の花を咲かせるオオイヌノフグリという草がありますが
(最近ではオオイヌノフグリのことを単に「いぬのふぐり」と呼ぶことが多くなってきているらしいですが)
オオイヌノフグリはもう少し花が大きくて(7〜8ミリくらい)けっこう目立ち、そのほかいろいろ細かい点で違っています。
また、同じ仲間にタチイヌノフグリ(花がとても小さい・茎が直立する)や
フラサバソウ(花が白〜薄紫・全体に細かい毛が生えていてなんとなく白っぽい)があります。
オオイヌノフグリ・タチイヌノフグリ・フラサバソウは明治以降に日本にやってきたとされ、
町中や人里で数多く見られます。
 
いっぽうで、イヌノフグリを見かけることは少なく、探そうとすると最初けっこう大変です。
それでも、何度か見つけると、なんとなくカンがつかめて、「ここには生えていそうだ」という感じがするようになり、
歩きながらでも見つけられるようになります。
 
今年これまでに、福岡市、久留米市、大牟田市、飯塚市で見つけることができました。
たまたま見つけた場所もそこそこあって、その感じからするとほかにももっと生育場所がありそうですが、
一日歩き回っても見つからないことも多く、たぶんところどころポツンポツンと分布しているのだと思います。
福岡市のある場所では、数年前はけっこうたくさん生えていたのに、
今年は4株しか見当たりませんでした。
たくさん生えている場所でもたぶん100株前後で、
ほとんどの場所では数株〜10数株しか生えていませんでした。
イヌノフグリは100年後に日本から絶滅している確率が40%と見積もられていますが(注2)
様子を見ていると、そう言われるのもまちがいではない気がします。
 
イヌノフグリについてはいつかこのサイトで特集記事を組みたいと思っています。
 
注:
 1. 環境省のレッドデータブックでは、絶滅の危険が増大している種「絶滅危惧II類(VU)」に指定されています。福岡県のレッドデータブックでは絶滅のおそれが1ランク高い「絶滅危惧IB類(EN)」です。もどる
 2. 環境省のレッドデータブックより。もどる
 
参考文献:
 環境庁自然保護局野生生物課(編) 改訂・日本の絶滅のおそれのある野生生物−レッドデータブック− 8 植物1(維管束植物) 2000年
 福岡県環境部自然環境課(制作) 福岡県の希少野生生物−福岡県レッドデータブック2001− 2001年

 
 
イヌノフグリの小さな花
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