以前、みちばた通信「山あいの小学校に」で、福岡・佐賀県境の佐賀橋から小川内を通って脊振山(せふりさん)に登る話をしました。 その後しばらく脊振に登ることなく日々を送り、今年の夏ひさしぶりに小川内を通って脊振へ行きました。 小川内の集落がなくなっていました。 福岡県の那珂川町五箇山(五ケ山)・倉谷から佐賀県の旧東脊振村小川内にかけての一帯に、ダムが建設されるという計画があると、以前新聞で読みました。 そのころは正直なところ、そんな計画がほんとうに動くわけがないと思っていました。 その後、現地に住んでいた方が立ち退き始めているという報道があり、最近になって、集落がすでに集団移転したと知りました。 ダムは、五ケ山ダムという名称で、福岡県が建設しています。入手したパンフレットによると那珂川の流量調節(洪水対策)や福岡都市圏の水道用水取水・渇水時対策が建設の目的とされています。 佐賀橋から小川内を通って背振へ向かう道の途中、小川内から福岡県に再び入ったところに、板屋という集落があります(福岡市早良区)。 むかし福岡市街から那珂川町経由でこの方面へ向かう西鉄バスは佐賀橋が終点だったのですが、しばらく前から板屋まで延長されて運行されていました。 それが、これも新聞報道によると、今年の春で路線が廃止されるということで、板屋に入る公共交通機関がなくなってしまうおそれがあるようです。 板屋はお住まいの方のほとんどが御高齢で、記事から推察するに、このバスがお住まいの方々の暮らしを支えているようです。市からバス運行の補助金が交付されているということですが、それでも「採算がとれない」とのことで、補助金の実額等は不明です。 参考記事(西日本新聞) 板屋には、佐賀橋〜小川内を経由する(私が歩く)道と、福岡市の早良から登ってくる道の2つしか道が通じていません(佐賀から脊振を越えて来ることはできますが生活の役には立たないです)。 だいぶ以前に板屋を通ったとき、集中豪雨で早良のほうから板屋に通じる道が土砂崩れで通行できなくなった後だったのですが、その道の修繕工事を市がしようとしないという話を近くにお住まいの方から聞かされました。 福岡市が「人工島」(現在のアイランドシティ)の建設に大金(借金ですが)を投じていた最中でした。 人工島はその後土地供用を開始したものの、見込んでいたようには土地が売れず、しかも現在も埋立工事が続いています。早良から板屋への道はその後自動車通行可能になったようですが(その道は長い道で、私は自動車に乗らないため、その道を通ったことがありません)、最近の「市政だより」では大型車の通行に注意が喚起されており、おそらく補修がその程度の状態にとどまっているのだと思われます。 県であれ市であれ、何の目的に応えるためであれ、何を優先させるためであれ、 人が暮らしてきた土地をこのように処することが正当化できるとはとうてい思えません。 小川内には今もたくさんの命が生きています。板屋にはそこにずっと暮らしておられる方々がおいでです。 そのことをここに記したいと思います。 |