子どもの頃、学校や町内会の行事で、福岡市東区の「雁の巣レクリエーションセンター」に行くことがありました。
福岡市の陸地側から志賀島へと長い砂州状の地形が伸びていて(海の中道)、雁の巣はその上にある街です。
雁の巣レクリエーションセンターは、当時は、野球場やサイクリングロードがあるほかは広い草地だったように憶えています。そこに大きな芋畑があって、よく芋掘りをしました。レクリエーションセンターと言えば、芋掘り、でした。
この雁の巣レクリエーションセンターの隣に、飛行機の倉庫(格納庫)の跡があります。雁の巣レクリエーションセンターは昔は飛行場だったそうで、その名残りをとどめています。
その飛行機格納庫が取り壊されるという話を、このごろ聞きました。崩れかかっていて、危険らしいのです。
保存運動もされているようですが、この9月中にも取り壊しが始まるというので、ほんとうに久しぶりに、雁の巣レクリエーションセンターに行ってきました。
別の用事をすませてからだったので、着いたのは夕刻でした。
入ってすぐの所に大きな野球場が出来ていて(雁の巣にダイエーホークスの2軍の練習場や試合に使わる球場があると聞いてはいました)、ほかにもグラウンドやコートがいくつも立ち並び、昔の面影がありません。
サイクリングロードを歩いていくと、ほどなく格納庫が見えてきました。
格納庫の近くには別の野球場が出来ていて、車が通れるようになっていました。以前は近くには行けなかった記憶があります。
格納庫は、壁面がかなり崩れ落ち、枠組みが残って形を保っている感じです。
ひとつ、壁や屋根がひどく崩れた格納庫が、林の中に埋まっています。レクリエーションセンターの側からはほとんど見えません。
樹々の間からわずかに骨組みが見えました。
小学4年のときの遠足で、やはりその時もみんなでイモ掘りをしたと思うんですが、昼の自由時間に、サイクリングロードが草地のはるか彼方へと続いているのを見て、向こうに何があるんだろうと思い、ひとりでサイクリングロードを歩いていきました。
そっちの方向へ歩くとたぶん海があるんですが、海は見えず、見渡すかぎり草が茂っていて(あくまでも記憶ですが)、左に飛行場の倉庫が見えていました。当時からすでに傷んでいたように憶えています。なんだか異様な雰囲気がありました。
後ろの遠くから「おーい!」と呼ぶ声がしたので、引き返しました。わたしが一人で向こうのほうへと歩いているので、クラスメートが騒いでいたんだそうです。先生は、「何があった?」と尋ねてくれましたが、何と言うほどの物を見ないまましかたなく戻ってきた感じだったので、なんとも答えようがなかったです。
その後、わたしはレクリエーションセンターに行くことがなく、格納庫もたまに車窓から遠く眺めることがあるだけでした。
格納庫前をいったん離れ、サイクリングロードをさらに歩いてみました。ジョギングする人、散歩する人と行き違い、昔ひとりで歩いたときの感じとはだいぶちがいました。視点も高くなりましたし。
草地も、いも畑もなくなったのかなあ、と思いながら歩いていると、遠くに少し草が茂っているのが見えました。
ああ、ああいう感じだったような、と、そちらのほうへ何となく歩くと、目の前に畑が広がりました。
サイクリングロードに戻って、さらに道の続きを歩きました。
海に出ました。小さな海でした。